ジジのお笑い建築学校 ジムインの松本晴子です
新コーナー「本日のペイサジスト」。旬のペイサジスト(=ランドスケープアーキテクト)を取り上げます。
第一弾はミシェル・デヴィーニュ先生です。
フランスの今をときめくペイサジストのデヴィーニュ先生、
2012年1月30日付で2011年ユルヴァニスム大賞の受賞が話題となりました。1958年スイスに近いモンベリアル出身の53~4歳の
イケメン・ペイサジストです。
1984年にヴェルサイユ・ペイサージュ学校を卒業。86年にヴィラ・メディチ大賞を受賞して国費留学でローマに滞在。88年にクリスティーヌ・ダルノキーと共同事務所を設立(~1996)。出身校ヴェルサイユやハーヴァードなどで教鞭を執ってきました。
デヴィーニュの活動で特徴的なのは著名建築家との共同プロジェクトです。
レンゾ・ピアノ先生(パリ、モー通りの住宅、89)にはじまり、OMA(アルメールのパブリック空間、2005)、リヨン・コンフリュアンスII(ヘルツォーク&ド・ムーロン、2009)、クリスチャン・ド・ポルザンパルク(ユーラランスの公共空間、2010)、ノーマン・フォスター(マルセイユの旧港再整備、2011)、SANAA,デイヴィッド・チッパーフィールドなどいわゆるスター・アーキテクトとのプロジェクトでその名を着実に高めていきました。また日本では隈研吾先生とともに
慶應三田校舎の「萬來舎」移築で屋上庭園のデザインを担当しています。最近ではジャン・ヌーヴェルとのグラン・パリ計画があります。
進行中のプロジェクトでは、
スガン島のプロジェクト。またヴェルサイユの森の南側に位置する
パリ・サクレー・プラトーのプロジェクトは7700ha規模の大型開発が注目されています。
さて。
魑魅魍魎のスター・アーキテクトたちから評価の高いイケメン・デヴィーニュですが、ではなぜいまなぜデヴィーニュなのでしょうか。少し考えてみました。
デヴィーニュ個人の資質についていえば、ペイサジズムを都市の規模で構想するダイナミックな構想力とペイサジストとしての地形学の理解や表現力が評価軸にあるように思われます。
特に、デヴィーニュは「アメリカ的」とされており、本人も言及するようにアメリカのランドスケープ・デザインからの影響が強いのも特徴的です。ル・ノートルの方法論と伝統を汲むヴェルサイユ・ペイサージュ学校の出身者として、オルムステッド以来のアメリカン・ランドスケープ・デザインを積極的に評価しています。オルムステッド設計のセントラル・パークに始まる都市と自然をダイナミックに結びつける公共空間のあり方を参照しながら、かたや20世紀に都市が大発展したヨーロッパでは公共空間が都市の規模では発達しなかったとする認識を示しているようです。そうした中で、プロジェクトの中において副次的な立場に甘んじていた「ペイサジスト」を「ランドスケープ・アーキテクト」の役割とイニシアティブを高めています。現実にはペイサジストがマスタープランの起草者にでもならない限り現状では建築家や都市計画家にくらべて副次的な立場にあるのでしょうが、都市が構造的な変化をとげる中で、たとえば大規模な跡地開発ににおいてペイサジストの仕事の重要性が見えてくる気がします。
まずは今回のユルバニスム大賞受賞という面から見た環境政策におけるペイサジストの政治的位置づけの重要化です。ユルバニスム大賞は1989年に環境・持続的開発・計画省により創設されました。国際的な審査員団により授与される賞で、持続可能な都市を含む都市の生成に貢献する複雑な任務を遂行する職業的活動を評価する賞です。毎年ユルバニスムと都市について議論する機会を与え同時代に対する心配、期待、そして都市の未来に対する仕事の道筋を生じさせる。
デヴィーニュの受賞は、ペイサジストとしてはアレクサンドル・シュメトフ(2000)、ミシェル・コラジュー(2003)に続く3人目です。なお環境省はユルバニスム大賞とは別に隔年のペイサージュ大賞も主催しています。こちらはペイサジストではなく景観プロジェクトに対して贈られる賞です。ペイサージュを評価する賞が二元化されている現実とは何かと考えると、ジャンルとしての環境・景観分野での関心とより大局的な政治的関心がそこに共存しているように思われます。ペイサジストの都市計画家としての評価は、景観計画という狭い範囲ではなく都市というより大きな範囲で職能としてのペイサジストを評価することであり、そこにフランスの環境路線の端的な意見表明がみられると思われます。一方でデヴィーニュで3人目の受賞ということはペイサジストの社会的評価、もしくは政策的重要性が高まっている表れといえるかもしれません。特にサルコジ大統領が打ち出したグランパリ計画がパリの大都市圏化とヨーロッパの環境基準の首都モデルの確立とイニシアティブの確保を意図したとすれば環境用件を充実させるのは政治的な必須事項となります。環境時代においてペイサジストは建築家に変わる都市のシンボリックな存在であり、ペイサジストを評価することで環境政策重視の姿勢を強調することが現在のフランスの都市デザインの大きな流れなのでしょうね。
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1989:パリ、モー通りの住宅(レンゾ・ピアノ)
2005:アルメールの公共空間(OMA)
2005:リヨン・コンフリュアンスI(フランソワ・グレテール)
2009:リヨン・コンフリュアンスII(ヘルツォーク&ド・ムーロン、2009)
2010:クラスター・パリ・サクレー(X. de Geyter, F Alkemede, AREP, 2010)
2010:ユーラ・ランスの公共空間(クリスチャン・ド・ポルザンパルク)
2011:マルセイユの旧港再整備(ノーマン・フォスター)
2011:モスクワ・スカルコヴォ・イノヴァティブ・センター(HdM, Valode et Pistre, SANAA, OMA, AREP, デイヴィッド・チッパーフィールド)